斯様に思います

そのへんのおじさんの日記

結婚できない男:序

いくら晩婚化などと言われていても、世間一般的に30歳前後が結婚適齢期であるということには何ら変わりはない。そして僕はその世間一般から外れてしまっている。事実として。考え方として。

僕の友人の中にもちゃんと結婚して家庭を築き、子供もいる人間はいる。いくらふざけた事を言うような奴でも人を育てているという事実は立派だなと思うし、その経験がない僕よりも少し違った上の視点を持っているんだろうと思う。それでも、そういう人間から見聞きする事を踏まえて家庭を持ちたいかと自分に問いを投げても、結論はそこに着地することがなかった。たぶん、僕は一人が好きなのだ。

とはいえ、僕は事あると口では結婚したいだのと言っている。この手の話は聞き手次第では非常に面倒臭い。それを回避するために、そして周りからヤバいやつだと思われたくない、ただそれだけのために。
まわりに一人でも自分は大丈夫などと言ってしまうのは悪手である。本音であったとしても。結婚はしておいたほうが良い。年取ってからどうするんだ。などと言われるのはもうお決まりだ。結局聞き流すしかないのだが、そもそもやり取りするつもりもない、グローブを嵌めないキャッチボールは1球でも苦痛なので避けたい。

その結果「結婚したいがいい人がいない。だれか近くにいればなあ」などと、少しだけ前向きな発言をすることが流れを終わらせる最短ルートだと気づいてからは、続けて「でもモテないからなあ。誰か知り合いにいません?」と、ひと笑いを稼いで流れを終わらせるようにしている。

脱線するが、そもそもこの「年取ってからどうするんだ」の発言の奥に、結婚が自分の介護のため看てもらうためのものだとする意図があるのなら、それはあまりに主観的というか勝手すぎるし、相手に失礼に思うのだがどういうつもりでの発言なのだろうか。年老いて結果的にそうなったとしても、それをはじめから目当てにするのは考え方として納得できない。それならなおのこと結婚などしなくて良いものとして見てしまう。
いつも思うのだが、夫婦はでき得る限りフェアであるべきと思っている。(この「でき得る限り」というのは家庭を持つ友人の話を聞いて書いているが、理由が局所的すぎる気もするので触れない。でも今思っていることなので残しておく。)武田鉄矢a.k.a金八先生よろしく「人という字は~」ではないが、持ちつ持たれつな関係であるべきの考えから外れないのだ。
結婚生活を知らない人間が描く理想論なのだろうけれど、たまにこういう話を聞くと癇に障る。

閑話休題
結婚に対しての考え方。ごく狭い世間。僕は周りの人たちの普通から外れてしまっている。とはいえ、僕にもそういう話が全く無かったわけではない。大なり小なり思うとありがたい話ではあったが、いつも幕引きは同じ「何を考えているのか分からない」である。何故そうなるのかを考えるより以前に、一人が気が楽な気質なんだろうと漠然と考えるようになって、だったらそうしようと、一人で生きる覚悟のようなものは多少なり持っていた。30歳を少し過ぎたあたりのことである。

そんな時期に世間と逆行する判断をした。多分自分が結婚をする、辿る道が見えないというか、そうなった時のイメージがつかないので考えるのを諦めた。それを考えること自体から逃げただけなのかもしれないが。

だがあるとき、(安易に書けないが)生の執着を目の当たりにしたことで、僕の中に立つ「一人で生きていく」と掘られた太い柱が勢いよく倒れてしまった。僕はその柱に余程寄りかかっていたのか、それが倒れたことで足腰が相当弱くなっていた。弱くなって、弱くなった先に、はじめて結論を今まで向かなかった場所に着地させた。そう思った僕はスマートフォンを手に取りアプリを探しはじめた。